garakutagoya

興味、関心のあったこと、そして私の気持ちなどを残していきたい

日記というかなんというか、要するにJournal前の思索。その6

野球における代打、それはとても難しく、そしてとても重要な役割を果たすものである。まず、代打とは何か。代打とは打順が回ってきた打者に変わる打者となる人の事を指す。つまり、代打というのは本来打つはずの人の代わりになって打撃を行うという事だ。これは本来その打席に立つはずの人のチャンスを貰って自分が打席に立つという解釈も出来るわけである。つまり、ある程度(少なくとも代打を出された打者)よりはその打席で結果を残さなければならないわけだ。

そもそも、代打というのはどういうところで出される事が多いのだろうか。一つは投手交代が行われる打席である。現代の日本のプロ野球では、投球内容が悪くなっている、球数が嵩み投手が疲れてきた、代えても十分に抑えられる他の投手がいる、等様々な理由があって昔ほど一人の投手が投げるイニング数、投球回数というのは減ってきている。いうなれば、投手の分業制が浸透しているという事である。となると、投手が試合の最初から最後まで完投する事も減り、途中で交代する事も当たり前になっていく。

そうなれば投手よりは打力に期待がもてるという事もあり、ここに代打が使われる事が多い。一般に投手は投球練習に多くの時間を割き、打撃練習をあまり出来ていないという事もあり、殆どの投手の打力というものはかなり低いとされている。その為少なくとも投手よりはマシ、という事で野手として代打が起用されるという訳だ。

ここで起用される代打は新人の試しの場であったり、安定した打率こそ残せないが長打のある野手、一軍と二軍の当落線上にいる野手であったりと、当たればラッキー、悪く言ってしまえばそこまでは結果を期待されていない野手を用いる事が多い。もっとも日本でこのような理由で代打が出されるのは投手が打席に立つセ・リーグのみであり、DH制が採用されているパ・リーグではまず起こりえない。

代打の出される事が多いもう一つの場面、こちらが極めて重要であり、そして代打が最も輝くところである。それはチャンスのタイミングで野手に変わって代打が出される場面である。打席に立つ選手を自由に変えられるという性質上、今日余り打っていない、選手との相性、左右の被打率、といった色々な要因によってスタメンで出ている野手であっても代打を出される事がある。

しかし、これは先程の投手への代打とは異なる。スタメンで出場している野手というのはある程度の打力が見込まれているという事が殆どであり、その選手に対して代打を出すという事は、代打に求められている事はそのスタメンの選手よりも、(その一打席だけではあるが)良い結果を残す事である。これは極めて難しいものである。それはスタメンにはある程度の打力が見込まれており、それを超えなければならないという実力、プレッシャーがその要因である事は勿論、何よりもし代打を出さなかったら、つまり元の打者のままなら、もしかしたら成功していたという心理状況になる事も辛いだろう。

しかし、代打というのはその性質上スタメンの選手と違い、何回も打席に立つ事が出来ず、また打撃に失敗したとして守備でフォローして挽回する機会というのも少ない。つまり、代打というのは貰えるチャンスが少ないにも関わらず、そのチャンスで決めなければならない存在なのである。

だからこそ、こんな厳しい中で代打で出てきた打者がチャンスで決めると普段以上に盛り上がるのである。例えば、2021年6月20日のヤクルト中日戦ではスタメン全員が一つもヒットを打てず、送り込まれた代打宮本がヒットを打ち、その後出された代打川端がツーランホームランを放ち、それがそのまま決勝点となった。2021年6月13日のオリックス広島戦では9回裏一塁二塁で代打ジョーンズが四球を選び、その後T-岡田が打ち、当時新人で22試合連続無失点記録を達成した栗林から価値あるサヨナラをもぎ取った。もっと古い例では近鉄時代の北川博敏の代打逆転サヨナラ満塁優勝決定ホームランというものさえ存在する。ともかく、代打というのは今までいなかったベンチから出てくる事もあり、球場の雰囲気を変える。そこで、そのチャンスで決める野手は一際印象に残るという訳だ。

ここまで書いて分かるように代打というのはとても奥深い。強いチームが繰り出す代打はまさしくジョーカーそのものだ。野球を見る時、普段より少し気を遣って代打を使うタイミングを見ると少しだけ野球が面白くなるかもしれない。